デッドライン読書会48回目のテーマ書は伊勢田哲治さんの「哲学思考トレーニング」でした。

分析哲学、科学哲学、懐疑主義、論理学、倫理学などの思考ツールを解説しながら、哲学的思考を身につける入門書の位置づけです。哲学的思考って馴染みがありそうでない言葉ですが、簡単に言うなら「いい感じに、物事の本質を捉えるような思考法」とでも言えそうです。「いい感じ」にっていうのがひょっとしたら本書の特徴?ストイックにぎりぎりやるのではなく、思いやり主義や、文脈・行間を読みながら発信者(と受信者ともに)によりそった思考法を推薦しているように受け取りました。(今回の感想文は本書の解説を汲み取り間違えているような気もするので、あくまでわたしの感想ということでご容赦ください。でも感想文ってそんなものか。)
デカルトの省察
デカルトが書いた「省察」(セイサツ)という書籍の存在を初めて知りました。デカルトは懐疑主義者と考えられているが実は懐疑主義に対抗する立場といったほうが正確らしい。その事情などについてデカルトが6日間にわたって語ってういるのが本書とのこと。哲学的専門用語もなく一般の人でも読みやすいと書いてあったため(独白的な日記な類ですかね?)、Amazonでポチろうかなと思ったところ、レビューはだいたい「難しい」の連呼だった。

読みやすいと言っても比較的読みやすいってことなんだろう…。 いずれ買おう。
価値観の違いを残したままでの解決法
5章で出てきたテーマ。仕事でよく出会うシチュエーションでしたので、大変参考になった。とある食い違いを解消したい場合の思考方法(とある結論を合意したい場合の思考方法と言っても良さそう)。
立場が違う(価値観が違う)者同士がどう結論を帰結するのか。結論を合意に至ることができない場合は、まずは論点をさかのぼり、前提(三段論法で言う大前提と、小前提)の段階ですり合わせができていない箇所を模索するのが第一歩になりそう。そのすり合わせができるのであれば、結論を再度模索できる可能性が残っている。それでも合意に至らない場合は、調停の手法として「手続き的正義」という考え方を採用する(多数決や代議士的な仕組み)。双方で合意できる手続きによってちょうどよい落とし所にまとめるという進め方になるでしょと。
自分も仕事でなんとなくやっているような進め方だと感じた。例えば、表面的な結論(「このソースコードは保守性が低いからリファクタリングしたほうが良い」とか)が出てきたときに、反対意見・賛成意見はチーム内で色々出る。でも、、、あれ?これってみんなどんな前提で議論しているの?とか、ふと不安になることがある(余談ですが、議論がふわふわしていて不安を感じたり、「は?よくわからん」って個人が感じたときは昨今のリモート会議下では声に出すのがよい。ファシリテータも画面上の表情からは拾いきれない気がします。リアルの場だと(空気で)意外に拾えてたんだけど)。結局「結論とその前提」では折り合わなくて、ではこの場合は「作業の担当者が真摯に意見を取り込んで、最も正しいと考える方法で対応しましょう。その結果を関係者で確認しあいましょう。」(合意できる手続き的正義)でやる、といったことを実践したことはある。
このテーマ深彫したいところだが、「手続き的正義」は本書の範疇外だったようで、今後も学びたいことですね。
通約不可能性
通約不可能性とは、
二つのグループがまったく違う世界観で世界を見るために基本的な出来事でさえも違って見え、そのために話が通じなくなるという状態を指す
第5章 みんなで考えあう技術
宇田川さんの「他者と働く技術」で出てくる「橋をかける」という考え方と同じですね。それを哲学的思考からどう解決できそうかを本書では議論。

結局この本には何が書いてあったの…w
個別のテーマはわかりやすく、著者の例示もわかりやすい。ただ個別のテーマがが多いため、最後のひと押しで『「結局、何がどうだったの?」という人のためのガイド』という本書を再構成したサマリーが4ページにわたってまとめられている。素晴らしい。哲学的思考の入門書という本書の位置づけからしても、この「まとめ」と続く「参考文献集」が今後役に立ちそうです。
関連して読みたくなった本
まえから積読しているこちら。

次の本は?
間に本書をはさみましたが、デジタルトランスフォーメーションジャーニーでどうでしょう?

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