【書評】世界をまどわせた地図

「世界をまどわせた地図 ~伝説と誤解が生んだ冒険の物語~」を読みましたので、書評を書いてみたいと思います。書評自体初めて書くので何を書くかも整理しながらになります。

 

本との出会い

読書会の時に本との出会いが大事ということを教えてもらいました。なぜ手に取ったか、だれに紹介してもらったか、なぜ読もうと思ったか、などです。この本は会社の近くの本屋でジャケットとタイトルにひかれて手にとりました。男子受けを狙ったこの装丁、素敵です。ただ、図鑑のような本なのでそれなりに重く、結局Amazonで購入して手に入れた形です。

 

読書の概要

出会いのところに書いた通り、本書は図鑑のような大きさがあるので、持ち運びには適しません。そのため自宅に置いて少しずつ読み進めました。合計6~7時間くらいかかった感じ。

おすすめ:★★★★☆ (星4つ!)

 

内容と感想

この本に紹介されている、島、大陸、海路、山、川などはすべて実際には存在しないものばかりです。存在しない島などが描かれた古地図を例にとり、なぜ世界を惑わせてしまったかを解説していきます。

この本を読んでいると地図が持つ不確かさがとても面白くなってきます。特に中世・近世の地図は、探検家が十分調べた土地はとても細かく描写されており、未開の地についてはとても曖昧な、そして、そこには色々な想いがつまった地図が描かれます。想いの半分くらいはお金や名誉といった欲望のようにも感じました。中世の探検家は、探検するための資金の援助が欠かせなかったようです。スポンサーから十分な資金を得るために、例えば、以前の探検を少し脚色したりします。あたかも、黄金にあふれる都市がありそうなことや、海路で遭遇した肥沃な大地がありそうな島、砂漠の中の貴重な水など、スポンサーがお金を出して見つけたくなるようなものをレポートに盛ってしまうんですね。それ以外にも、あまりにも長期間の旅の末、「絶対ここに島があるはずだ」という気持ちから蜃気楼が本物の島のように見えてしまい、それが地図にプロットされることも多かったようです。あとびっくりしたのは本当にただのペテンで描かれるものもいくつもあったことです。

こういった不確かな情報に基づいて、中世の様々な学者が地図を書きます。著名な学者が書いた地図が転記され、また情報が追加されていくと、もとは同じ情報にも関わらず、複数の地図に同じ「まぼろし」が現れるようになります。複数の違う地図で同じ「まおろし」が現れると、それはもう現実にしか見えなくなってしまうのはよく分かります。

そういった「まぼろし」は時代とともに、航海術や測量法などが発達することにより、徐々に本物と偽物に分けられていったそうです。さらに現代では衛星からの写真でより精緻に見分けられるようになりました。そんな現在でも地図にはまだ多くの誤りが含まれているようです(中には「まぼろしの島」がまだ残っているそうな)。ただ、地図に誤りがあるっていうのは直感的には分かる気がします。カーナビで更新されてない地図って、道があったり、なかったり、しますよね。昔のように欲望で地図が作られるようなことは今はないかもしれませんが、地図って人の手が加わり変化するという魅力があるんだなと再認識した次第です。

最後になりましたが、本書の魅力はなんといってもたくさん出てくる古地図とその解説です。古地図の端にある日本がどんな形になっているか(昔の地図の中心はヨーロッパですから)、航海士がどういうルートで探検したかなど地図を見ながら(Googleマップと比較しながら)思いをはせるのはとても面白かったです。

 

 

 

 

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