いま流行りの「Teal組織~マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現」を、これまた流行りのABD(Active Book Dialogue)で読むということに挑戦しました。以前からとても期待した読書方法だったのですが、その期待通りの結果が得られ、とても満足しています。ぜひ広まって欲しいので、私が体験したABDを記録に残したいと思います。
Active Book Dialogueとは?
Active Book Dialogue、略してABDと読みます。およそ1年前の2017年春にアクティブ・ブック・ダイアローグ協会が発明した読書法とのことです。ポイントをあげると、「事前の準備なしで、大人数で分担し、数時間で要約し、共有することによって、分厚い本を読破する」といった手法です。実は具体的なマニュアルも前述の協会にて無料で公開されています(http://www.abd-abd.com/)。
Teal組織とは?
2018年1月に邦訳版が出版された、次世代の進化型組織(ティール)に関する書籍です。内容としては、
- これまでの組織の進化の歴史
- 進化型組織の事例
- 理想的なプラクティスやツール
- 進化型組織を作るために我々はどうしたら良いか
といったテーマでまとめられています。いまふと検索して気づいたんですが、「ティール」とは邦訳すると「鴨の羽(かものは)色」なんですね。だから本の表紙もあの色だったんだ。ページ数は592頁。一人で読むには相当大変な部類です。
Teal組織をABDでどうやって読んだの?
今回は25名(うち1名はファシリテータ兼務)でABDを実践しました。
0. 準備(開始前まで)
ABDを実施する前には、こんな段取りが必要です。
- (運営側)集客
- 対象の書籍の総ページ数から算出して、一人20~30頁分ほどが担当になるようメンバーを集めます。
- (運営側)本の準備
- 本を参加者の人数に合わせて、分割します。目次で区切ったり、章で区切ったり、します。
- 物理的に本を裁断して用意する場合もあれば、参加者に本を持ち寄ってもらいページでくぎって共有するという方法もあります。
- (参加者)心の準備
- 特に何も準備しなくてよいです。
- 本を事前に読む必要は本当にないです。
- あと、ABDも分かりやすい手法なので予習不要です。
1. チェックイン(00:00~00:30)
ABDを実施するグループのコミュニケーションがよくなるように、場の準備体操をします。
- 自己紹介
- アイスブレイク
- 対象の書籍の共有と、参加者が担当する箇所の共有
- 会場のルール、進め方の確認
2. メイン(00:30~03:45)
ABDのメインどころです。参加者は担当範囲を読書し、まとめ(コ・サマライズ)、共有(リレー・プレゼン)、対話(ダイアログ)の順に進んでいきます。
- コ・サマライズ(60分)
- 担当する20~30頁の範囲を個人で読み進めます。
- 読み進めつつ、B5用紙最大6枚ほどに要約文を作ります。
- 紙にまとめた要約文に基づいて、のちほど全員の前で共有(リレー・プレゼン)するため、文字は大きく書くのがこつです。
- 自分の前後の担当は気にせず、とにかく担当のページを深く理解すればよいです。
- 他の参加者へちゃんと伝えなくてはいけないという、心地よい緊張感をもって読書ができます。
- リレー・プレゼン(3分×参加者、90分)
- コ・サマライズした紙を壁一面に貼ります。壮観です(後載)。
- 一人3分間を制限時間で、担当した箇所をプレゼンします。
- この時、自分の担当範囲より前の人の内容を聞いていると、「自分の担当の章の位置づけはこうだったのか!」と気付き、コ・サマライズしていたときのちょっとしたモヤモヤ感が解消していきます。
- ダイアログとギャラリーウォーク(45分)
- コ・サマライズとリレー・プレゼンで読破した1冊についてダイアログで理解を深めます。
- 方式はどのようにしてもOK。円座で会話しても良いし、グループを作り共有しても良い。
- 対象の本の深堀りも良いですし、周辺分野の知識を披露・共有しても良い。多くの方が参加していると様々な観点で話ができるためとても贅沢な時間です。
- 最後に、壁に貼ってあるコ・サマライズをゆっくり見て回りましょう。
ギャラリーの様子
3. クロージング(03:45~04:00)
今回のABDを振り返ります。3名くらいのグループで感想を共有するのがよさそうです。最後に後片付けと会場の原状復帰をしておしまいです。
今回のABDはどうだったか?
流れは上で説明したような進め方でした。準備は本当に要らないのか?という最初の不安はあっさり裏切られました。コ・サマライズで挑戦するのは30頁ほどであるため、それさえ読めて要約できればOKです。書籍の前提知識も不要でした。
次に書籍に対する理解はどうか?この4時間ほどの時間で、600頁弱の書籍を大まかながら理解することができました。普段一人で読んだ場合と比べて短時間で書籍の要点を見ることができるため、肝心な部分の理解が深くなると感じました。ただどうしても細かい事例や、ちょっとした用語の定義はコ・サマライズの段階で省かれてしまう場合が多いようです(私もいくつか初出の言葉の定義を省いていたことに、リレー・プレゼン中に気づきました)。隅々まで理解するためにはじっくり時間をかけて読む方法をとる必要がありそうです。ただ、ビジネス書の類の本の読み方(理解の深さ)としてはABDはちょうど良いと感じました。とくにちょっとしたブームとなった本の場合、参加者を集めやすいという側面もあると思います。
最後にABDでそれほど期待していなかったが良かった点として、ダイアログでの話の広がりかたです。参加者のバックグラウンドやメンバーの多様性によってダイアログの質は変わってくると思いますが、リレー・プレゼンで何度も出てきた考え方を深堀できたり、別の書籍でも言及していると教えてもらえたり、または自分の現場での経験など、多岐に渡る議論ができると思います。
今後どうしようかな?
実践方法は簡単なのに効果があって楽しいという素敵な読書法でした。問題は良い書籍が選べられるか?と、多様なメンバーを集められるか?ですね。ぜひ自分の周りでも実践してみようと思います。
コメント