デッドライン読書会#15「他者と働く」の感想文

 デッドライン(締切)を味方につけて、積読を消化する読書会:デッドライン読書会第15回の感想文投稿です。第15回の課題図書は「他者と働く」でした。

 デッドライン読書会ってなに?は下記の投稿をご参照ください。

課題図書

 課題図書は、宇田川元一さんの「他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論」でした。2019年10月出版です。

 本書はデッドライン読書会第13,14回の課題図書であった「チーム・ジャーニー」の参考文献で登場しており、著者の宇田川さんも推薦を書かれています。そのつながりから選書しました。

感想文

全体

 本書は伝えたいことに芯が通っており、分かりやすかったなぁというのが最初の感想でした。

 本書では、

  • 組織におきる関係性の問題を解決するには、「私とそれ」といった一方的な見方から、「私とあなた」という関係性へ移行する必要がある
    • これをナラティブの溝を渡るを表現
  • ナラティブの溝を渡るためには、準備→観察→解釈→介入のステップを踏む

この2つの観点を様々な事例を提示したり、関連する考え方で補完して説明しています。

 本書の内容を実践するに先立ち、素の自分がどの範囲までを「私とあなた」と捉えているのか自分自身が認識することがスタートだと私は思いました。関係性の問題が発生したとき、「私とそれ」といった関係性で捉えるか、「私とあなた」といった関係性で捉えるか、誰しもゼロイチではないです。そこには範囲があり、自分はこの範囲を「私とあなた」で捉えられるという広さがあるのではないでしょうか。自分の言動、考え、書いた文章(メールやチャットなどもヒントになる)を思い返しみて、相手方を「役割」で捉えている場合は「私とそれ」の状態なんだと思います。こういった場合は相手のナラティブは置き去りになった関係性になっていますよね。

 私も思い返してみましたが、自分は「私とあなた」と捉えている範囲は意外に広いのではと感じています。しかしながら、怖いのは無自覚・無意識の部分が大いにあるってことです。そもそも関係性を築かなければいけないなんて思っていもいなかった!という状況がままありそうです。

 本書では、組織における関係性の問題を「適応課題」と呼称しています(より簡易な課題、つまり、何かしらテクニックを駆使すれば解決できる課題を「技術課題」と呼んでいます。)。この「適応課題」を解決するテクニックが「ナラティヴの溝を渡る」ことです。果たして、解きほぐすことが難しい「適応課題」を準備→観察→解釈→介入のステップを踏めば解決できるかは、ちょっと疑問です。アジャイル的に繰り返し改善すれば良くなっていくのだろうということは感覚的には分かります。しかしながら、真に難しい課題の場合は、ある種のガラガラポン(解体→再構築)も手段の一つになるのではと思いました。

 

個別

 個別にコメントしたいところを抜粋します。

対話のプロセス2.観察「溝の向こうを眺める」

P.42 第2章 ナラティヴの溝を渡るための4つのプロセス

 プロセスの前半に「観察」を定義しています。これは相手の事情や環境をよく観察することにより、私がどういったアプローチを選択できるのか(どういった橋を架けることができるのか)、そのリソースを手に入れる行為です。本節の挿絵がとても良いですね。相手がどのようなプレッシャーを感じているか、誰から影響を受けているかを、よく観察するわけです。「観察」とはいっても、ただ見るだけではなく、インタビューや関係者へのヒアリングなどの活動も有効だと思います。適切なアプローチを選択するには、多くの観察によって情報を仕入れることがミソになりそうです。

 一方、このご時世、リモートでのコミュニケーションが急激に増えつつあり、観察手法はどう変化させていくべきか気になるところです。テレビ会議での情報、チャットやメールなどのテキスト情報、などが観察対象の中心になるでしょう。実際に現場で直接見聞きしたり雰囲気を嗅ぎとったりすることと比較すると情報量が落ちるようにみえます。そのような環境下でも有効となるノウハウを積まなくてはいけませんね。

個人とは「個人と個人の環境」によって作られている

P.68 第2章 ナラティヴの溝を渡るための4つのプロセス

 哲学的な考え方を熟知してコメントするわけではないのですが、本当にその通りだと思います。「〇〇してほしい!」「でもしてくれない!」といった状況では、「観察」フェーズで相手をとり囲む環境に意識的に目を向けることがとても有効だと思います。本人も内心「やりたくないわけじゃないんだ!でも、あれがあぁでややこしくて…ごにょごにょ…」ってパターンは私も経験しましたし、とても多いと感じています。介入フェーズではその周辺から崩したほうが、周りの厄介事も片付き、相手方の問題にも介入でき、一石二鳥にできると思います。

対話の罠③「相手と馴れ合いになる」

P.145 第6章 対話を阻む5つの罠

 (自分には)あるあるです。橋を架けた後に、相手側にずっといてしまいます。本来やり遂げたいことを意識し、橋をうまく往復することが重要ということを肝に銘じます…。

雑な独り言コメント

  • 実際に会社で使う場合は「ナラティヴ」ではなくて、別の言葉がよさそう。「ナラティヴ」は馴染みが無いし、説明するにしても難しい。
    • 背景、コンテキスト(△)、事情、気持ち、etc
  • 相手のナラティブ(橋を架ける先)は実は激しく変動しているものなのではないか。橋を架ける適切なタイミングを「観察」の時に把握しているのが重要そう。
    • 人間気分もあるし。

感想共有会をしました

 本書を読んだ3人でオンライン上に集まって、感想共有会をしました。

使った環境

 オンラインで集まって開催したため、ツールとしては、

  • Zoom(ウェブ会議ツール)
  • Miro(オンラインホワイトボードツール)

を利用しました。初めてMiroを使いましたが、とてもスムーズに会話の役に立ちました。反応の良さ、ツールがそろっている(タイマーや、付箋、ドット投票、など)、ホワイトボートとして広さが無限なところ。

進め方 

 共有会の進め方としては、

  1. おのおのが話してみたいトピックを事前にあげる(宿題)
    1. Miroのポストイットに書いておく
    2. 10個ほど上がっていた
  2. 会話したいトピックをドット投票で決める
    1. Miroのドット投票を利用
  3. 投票が多い順に5~10分しゃべる
  4. 最後に感想

でした。1時間勝負です。

 話したこと

 ドット投票で会話したトピックは5つ。主に会話した内容もメモがてら書きます。

  • 本書を手に取ったきっかけ
    • どうしてこの本にたどり着いたのか
    • 何に期待して読み始めたのか
    • 類書は何があるのか
  • 「組織」「経営陣」ではなく「〇〇さん」だと思う
    • バイネームを利用しないのは、擁護したいからか
    • エンジニアならば、個人ではなく、ロール・チームで語るべし
    • 仕事は最終段階ではチームの責任になるのでは
    • 成果物の共同所有
    • 会社を去った個人は会社の文化として残るものか
  • 同意、共感はしなくてもいいけど、認知は使用
    • 非同意を記録として残すか(振り返りのため)
  • チームとナラティブ
    • 「1対1」よりか「1対多」というパターンが仕事では多いのでは
    • チームメンバー全員にナラティブの橋を架けるのは困難
    • チームのナラティブは個人のナラティブよりか豊かなのか
    • ナラティブは仕事では使いづらい言い換えには何があるか
      • 背景、ストーリー、ジャーニー
  • 「問題vs私たち(2人)」にいかにするかって話にも思える
    • 「私たち」と「私とあなた」の違い
    • 「チームメンバーらしい」か「チームらしい」か
    • チームのナラティブに橋を架ける方法論はまだ存在しないか

私の振り返り

 この中で私が一番刺激を受けたのは「チームとナラティブ」のトピックでした。本書は「個人間のナラティブに橋を架ける」ことをテーマにしています。それを拡張したときに「チーム内でナラティブの橋をどうするのか」というテーマが上がってくるのではないでしょうか。

  • チームの中の自分
  • チームに接する自分(ロールのイメージ:スクラムマスターとか)
  • チームに関係する自分(ロールのイメージ:マネージャー、チームのコーチ)
  • チームの外の自分(例えばほかのチーム)

といった、チームとの関わり具合が色々と考えられる中で、どのような橋を架けるべきか、橋を架けるためにどういった準備をすべきかは、本書で扱う範囲より複雑な話題だと思います。

次回

コメント

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